醸造アルコールは正義か悪か!?もし日本酒が純米酒だけになったなら

日本酒の世界では長らく「純米酒 VS アル添酒論争」なるものが存在するほどに、アル添に対しては賛否両論が日々巻き起こっています。

アル添とは?

醸造アルコールの添加のことで、醸造アルコールとは主にサトウキビの糖蜜を発酵させて蒸留したもので、一言でいうとアルコール度数30度の焼酎です。

純米酒派の意見としてよくあるのは、「日本酒とは本来お米だけでつくるもの。それに蒸留酒を足すとは何ごとぞ」という感じでしょうか。

そしてアル添派の意見としてよくあるのは、「アル添があるから安く買うことができる。味も軽くなる」ということになるでしょうか。

醸造アルコールを添加するメリット

■酒質が安定する
醸造アルコールは酒質が変化しないので、全体的に変化しにくくなる

■味に透明感がでる
と書くと聞こえはいいけど、味が薄まるため飲みにくさが軽減する

■吟醸香がたちやすくなる
香り成分は水よりアルコールに溶けやすいため、アル添することにより香りを強調させる

■もろみの醗酵をとめる
アルコール度数が高くなると酵母が死滅し醗酵がとまる

■酒の増量
密かにこれが一番の理由だったりする

アル添の起源は江戸時代

アル添されるようになったのは江戸時代からで、その頃は醪の劣化や腐敗をふせぐために投入していました。(柱焼酎)

戦後の食糧難の際には、お米の使用量を少なくして醸造アルコールを多めに添加し、不足した味わいを補うために「糖類・酸味料」を添加した三倍増醸酒というものが誕生しました。

食糧難から開放されたバブル期にも大手メーカーが大手を振って製造していましたが、2007年の酒税法改正により三増酒は禁止されています。

アル添した日本酒の味わい

実際飲むとどんな味になるかですが、添加量と造りにもよるんでしょうけど、純米のコクに比べると軽やかな味の後にアルコールの刺激が舌にピリピリきます。

この醸造アルコール感は熱燗にするとあまり気にならなくなるんですが、冷や(常温)で飲むと刺激がよくわかります。でも純米酒の中にもアルコール感があまり滑らかではないのもありますので、完全な判断はぼくのような素人には不可能です。

ぼく個人の意見としては、「まあどっちもアリっしょ」っていう見境のないものでありますが、実際どちらにもいい部分はありますので、まあ気分やノリで使い分ければいいじゃんと思うわけですよね。

近年では純米を好む傾向にはあるんですけどね。軽やかな純米酒もありますし、できれば醸造アルコール感はないにこしたことはない、といった感じでしょうか。

大吟醸へのアル添はまた別の意味を持ちます。アルコール発酵の際に出る香りは、水溶性なので水よりもアルコールへ吸収します。なので、大吟醸にあえて少しアル添することにより、香りをより引き立たせるという使い方もあるのです。

もし醸造アルコールが禁止になって 純米酒だけになったら?

まあ現状ではあり得ない話ではありますが、仮に醸造アルコールの添加が禁止されたとなったときは、いったいどんなことになるのでしょうか。

大手メーカーからすれば主力製品が全否定されてしまうわけで、まず考えられるのは今は表立っては使用されていないとされる外国産米をフル活用することになるでしょう。

さらに中国や東南アジアの農家と酒蔵が直接契約して、お米を栽培してもらうことにもなるでしょうね。関税やら輸入量の規制はなんとか例外を認めてもらったという仮定ですが。

裏ではこっそり事故米の流通も増えるでしょう。融米仕込みや米糠糖化液など技術がさらに発展する可能性もあります。これにとどまらず、また新たなる錬金術をも生み出すかもしれません。悪い意味で。

大手酒造メーカーは、小さい蔵が逆立ちしても叶わない立派な設備や技術やノウハウを持っていながら、それを最高のお酒を作るという方向に向かっていないという部分において、これまでは地方の小さい酒蔵との住み分けができていたと思います。

もし、大手酒造メーカーがもしいいお酒を作ることだけに本気出したら、全国で潰れる酒蔵も多く出るだろうな~と思いつつ、でもそういう方向には向かわないだろうな~とも思いつつ。

そして、商品のラインアップから普通酒やら本醸造やらのアル添ラインナップがなくなりますね。

今まで普通酒・本醸造酒・純米酒・吟醸酒・純米吟醸酒・大吟醸酒・純米大吟醸酒があったとしたら、純米・純米吟醸・純米大吟醸の3種類だけになっちゃいます。

まあそれだけだとラインナップが寂しすぎるので、とにかく低コストに抑えて通常の純米より落ちるものを、あえて「特撰純米」として売ってみたり、大手メーカーであれば融米仕込みや米糠糖化液で醸したものを「佳撰純米」としてみたりするかもしれません。

地方の酒蔵だと、低アルコールテイスト、生酒、濁り酒、違う酒米でも醸す、清酒酵母以外の酵母(花など)で醸す、古式醸造法、熟成酒、貴醸酒などなど、これらは今でも既にあるものですが、アル添酒が消えてしまうことの危機感からの創意工夫により、新たなイノベーションも生まれるかもしれません。

日本人は制約の中でこそ、輝かしい知恵を発揮する民族ですから。

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消える「純米酒」

すべてが純米酒であるならば、わざわざ「純米酒」などと名乗らなくてもいいわけですよね。「頭痛が痛い」とか「日本へ来日」とか言うようなものです。

ではなんと呼ぶのがふさわしいか。「普通酒」では今までのアル添のイメージが強すぎるし、そもそも普通酒なんて呼び方は粋じゃない。あれは格下のランクのものだからまかり通っていたようなものです。

「清酒」は酒を濾過して透明にしたもののことをいうし、「日本酒」は清酒も含めたもっと全体的なものをいうしで、ちょっと今までの呼び方ではピンときませんね。

では仮に、これまで「純米酒」と呼んでいたものを、今ここでは「精米酒」とします。

ということでラインナップは「佳撰純米」、「上撰純米」(精米酒より劣るものなのであえて純米を強調)、「生酒」、「濁り酒」、「精米酒」、「吟醸酒」、「大吟醸」、「特別大吟醸」(さらに高品質)など、他にも生酛造りや山廃造りなどもありですね。

これらをベースに精米歩合や酵母を変えたもの、酒米を変えたものを商品名を変えて売ったり、スタイリッシュなラベルにしてみたりなどすれば、なかなかのラインナップになるではありませんか。

これは醸造アルコール撤廃もワンチャンあるかあ!?……なんて妄想して楽しんでましたが、そもそも日本酒というものの定義は「国産米を原料とし、日本国内で製造された清酒」という大原則がありますので、外国産米を使用する前提でのこの妄想はそもそもありえない話でした。

まあ酒税法を改正してまで醸造アルコールを廃止するメリットもそうないしね…

しかし、日本酒が世界で戦うには醸造アルコールの存在は軽視できません。

海外ではワインにアルコールを添加するシェリー酒やポートワインなどを指して「酒精強化ワイン」と呼び、一般のワインとは完全に区別されています。

日本酒は海外では「SAKE」、日本のSAKEは「JAPANESE SAKE」と表記されますが、アル添したものも純米酒も同じ「SAKE」では海外の人たちは混乱してしまうでしょう。

現在海外へ輸出されている日本酒は特定名称酒(品質の高いもの)がメインということで、今は特に問題にはなっていないようですが、もしSAKE好きな外国人たちが日本に来て日本酒を飲んだら逆にびっくりするかもしれませんね。

「Oh!なんでこんなおいしいSAKEにアルコールを足しちゃうんだい?」

「Hey!なんでこれが同じSAKEの扱いなんだ?」

と。

日本酒業界の未来

ぼくは別に醸造アルコールは悪だとは思いません。むしろ低価格なことで気兼ねせずに食事を楽しめるのはありがたいと思っています。ですが、これらのものを同じ「日本酒」というカテゴリーに含めてしまうのが問題であると思っています。

「日本」の名を冠する国酒に、こんなまやかしがあってはいけない。

三増酒が戦後の食糧難がきっかけだったことは、それはもう致しかたないことです。米がなかったんだから、米が貴重だったんだからしょうがない。

三増酒は酒税法により市場から消えましたが、「じゃ二増酒ならいいんだよね」ってことで、大手メーカーはこれをせっせと造っているところも多いですね。

しかし現代は戦後の食糧難なんかとっくに脱しているし、経済の停滞やら不況やらも言われていますが、日本は今でもじゅうぶん豊かな国じゃないですか。

日本酒の消費量は全体的には少しずつ落ち続けていますが、特定名称酒はわずかながら増え増え続けています。このことからわかるのは、日本酒はもはや量から質へシフトされつつあるということです。

そもそもかつては日本酒のイメージがよくなかった。今でこそ小さい蔵も頑張っておいしいお酒が数多く出回っていますが、かつて日本酒といえば「大手のCM」「紙パック」「よっぱらいオヤジ」「まずい、頭痛くなる」というイメージがありませんでしたか?

初めて飲まされた日本酒がこのようなもので、これで日本酒が嫌いになったとしたら不幸としかいいようがありません。大手酒造メーカーの罪は軽くないと思います。

海外では日本酒が注目されてきているという話も聞きますが、本当にグローバルなものとなるにはまだまだこれからといったところでしょう。

日本酒の消費量が減り続ける昨今ですが、この素晴らしい日本酒の文化を守り、発展させていくには何をやっていくべきなのか。

けっしてアルコールの足し方や増量の研究している場合ではないと思います。

ではでは、今回はこの辺で!

コメント

  1. タカキ より:

    自分みたいな酒好きだけど日本酒苦手な人間はだいたいアル添の日本酒でダメなタイプが多いですよね、キチンとした日本酒なら飲めるんですけどねぇ…
    とまあええなもとかむぎこーんを飲んでる自分が言う戯言ですけどねw

    • あるのん より:

      日本酒は基本ダメだけど、いいものなら飲めるって人は、だいたい若い頃にやらかしちゃってるんですよね。
      その時の負のイメージが強すぎて、今も日本酒を受け付けないという人を何人も見てきました。

      むぎこーんは衝撃的でしたよw
      あれこそアル忝の味のような気もしますが、やはりそこは過去の失敗がないからでしょうかねえ。
      まあ飲んだことないけど(笑)

  2. アパパネ より:

    『若い頃にやらかしちゃって』!!
    『負のイメージ』!!!!あたいのことかぁ~いwwwww
    ちゃま! ハーイ(o´・∀・`o)ノ質問
    いい日本酒は酔わないのん??
    日本酒=あたい記憶をなくすので禁止( ´▽)-3 プハァ~ヒクッ

    • あるのん より:

      やはりそうか・・・( ´_ゝ`)
      若い頃のやんちゃは大学だったり職場だったりの環境にもよるので、
      酒が悪いというだけの話ではないと思うけどね。

      いい日本酒でも酔いますw
      でも水のように綺麗な大吟醸だと、熟成によってアルコール分子に水の分子で包まれてアルコール感を感じにくくなって酔いにくいと感じるものはあるねえ。

      でも他の日本酒もアルコール度数は同じだから、最終的な酔い方に差はないと思うんだけど。

      でも水のようなお酒はひとりで一升飲めても、多めにアル添したお酒は一升どころか四合もきついっす。

      その日の体調も関係してくるんで、結局のところ明確にはわからないんだよね~。

  3. とるきち より:

    一般的に悪い日本酒は翌日まで残り、いい日本酒は翌日悪酔いしない、というのはこのアル添なんすかね?飲み過ぎれば同じとは思いますが、その辺り気になりますねー。

    自分も日本酒に良いイメージ無かったのですがあるのんさんにオススメされたのは確かにイメージを覆すもので驚いた記憶がありますね。

    • あるのん より:

      実はアル添は悪酔いとは関係ないそうで。
      醸造アルコールが純粋なエチルアルコールであれば、
      肝臓が分解しやすいので悪酔いはないんですねえ。

      意外なのは純米酒がやばいということ。
      純米酒には純粋なアルコール以外のエキス分も濃厚なので
      (高級アルコールといわれるもの)
      肝臓が分解しにくいものがあったりするんです。

      なので、エキス分濃厚な純米酒が逆に悪酔いのもとになったりするそうな。
      あんまそういう実感ないので誤差だとは思うんですが…。
      にごり酒とかとくにヤバいそうで。

      アル添すると全体的に薄まるから
      逆に悪い酔いしにくいという話がありますね。
      飲みやすくて飲みすぎれば同じですがw