わたしは名探偵あるのん。
わたしに解けないトリックなどない。
あれは確か、年末の週初めの夜のことだった。
わたしは『鶏っく富山店』という居酒屋に電話し、コース料理を予約した。
このお店は店名からも察しがつくように、鶏にこだわったお店ということで、鶏好きのわたしの期待はすこぶる高まっていた。
コースの料金は飲み放題も含めて、なんと3,000円。
安い……、安すぎる。
安すぎて不安になるほどだ。
メニューを見ると、全国各地のブランド鶏がそろっているし、炭火焼きや瞬間焼きなど、調理法にもこだわりがあるのが見うけられる。
このようなものが、飲み放題込で3,000円!?
そんな、まさか……
いったいどんなトリックを使えば、そのようなことが可能になるというのだろうか。
すまない、まったく見当がつかない。
我々を待ち受けていたコース料理
そこで出てきた料理、それは、
メニューに載っている料理とは1ミリもかすらない、完全オリジナルメニューであった。
経営努力を感じずにはいられない、廉価版メニューの数々。
ふふ、やるじゃないか。
この日、ふくれたお腹とは裏腹に、しぼんだ気持ちで店を後にした我々なのであった。
このままでは終われない
後日、このおいしそうなメニューの真実を突き止めるため、再び同店へと訪れてみた。
チキンガーリックトースト(400円)
地鶏炙り焼き盛り合わせ 3種盛り(850円)
ふむぅ、なかなかよいではないか。
朝挽き鶏 肝臓瞬間焼き(680円)
絶妙な火加減、クセもなくクリーミーな味わいに舌鼓をうつ。
たまらず芋焼酎を注文せざるを得なかった。
鶏の肝がこれほど臭みもなく食べやすいだなんて、いったいどんなトリックを使ったというのだろうか。
すまない、わからないものはわからないんだ。
そして、次にオーダーするものを検討していたところ、メニューにこのような写真があった。
ささみの風干し炙り(480円)
秘密の漬け地に12時間漬け込んだ後、12時間風通しの良いところで干すと、アミノ酸が増え、一味違う鶏に変身です。
鶏っくのメニューより
味の想像がちょっとつかないが、とにかく美味しそうな雰囲気は伝わってくる。
ちょっと透き通っているようにも見えるが、これはジャーキーとか鮭とばとか、そういうカテゴリーなのだろうか。
これにはワクワクがとまらない。
写真のトリックにやられてしまったな、はは…
しかし食べてみると、これが存外にうまい。
外側の焼けた部分は固めで、中は柔らかくてまるで繊維質のような食感。
エイヒレとアタリメを彷彿とさせる、抜群の珍味である。
これはやたらと酒がすすむではないか。
味は味噌の風味もあり、秘伝のタレが複雑な味を醸し出している。
このタレにはいったいどんなトリックが……。
すまない、秘密だそうだからわかるはずもない。
そして最後のオーダー。
〆の一品はこれしかない。
鶏スープ(100円)
飲み疲れた肝臓も、これで少しはほっこりするのではないだろうか。
そんな我々の予測とは裏腹に、
鶏スープには、大量のモモ肉が投入されていたのである。
困った…、また酒がすすむではないか。
しかし、わずか100円でこれほど肉が入っているとは、いったいどんなトリックがあるというのだろうか。
すまない……、もう許してくれないか…。
わたしは迷探偵あるのん。
わたしに解けるトリックなどない。
鶏っく富山店
住所:富山県富山市新桜町2-26 あるぺん村 新桜町ビル5F
電話:076-431-3665(問い合わせ専用)
定休日:年末年始(12/31・1/1)
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