こんにちは、富山人あるのん@_arnon_です。
今回の記事は、前回に書いた“鬼滅の刃と富山の意外すぎる共通点!滅鬼の刃聖地巡礼スポットのご紹介”の記事と微妙に関連のある記事ではありますが、鬼滅の刃を知らなくても読める内容になっています。
前回の記事は富山市八尾にある「滅鬼」という不思議な地名の由来を調べた内容でした。
滅鬼の地名の由来はwikipediaによると以下のように記されています。
地名の由来は、近世には大密林地帯で狐狸盗賊の類が出没し、人を近づけなかったので勇猛の士がこれら妖鬼を退治したので滅鬼と名付けたとの説と、神通川のドンドコの流音からきたとの説がある。
引用:wikipedia
この内容はまさに、鬼殺隊が鬼を退治する鬼滅の刃の世界観のようだと思ったのですが、もっと深い情報を得たいと思い、手当たりしだいに富山の地名に関する本や文献を調べてみました。
すると、ついに「鬼神人を食む」という文献にたどり着くことができました。
この文献は八尾出身の屈強な男と鬼が出てくる話のようで、ぼくは思わず「こ、これやあ!これぞワイの求めてたもんやあ!」とテンション瀑上げで読み進めていきました。
以下がその話になりますが、皆さんもぜひ読んでみてください。原文ママではなく読みやすくなるよう修正させていただきました。
鬼神人を食む
奮藩時代の諏訪町に平林屋某という身の丈が六尺もある男がいた。富山藩は某の屈強さをかって富山藩の駕籠舁(かごかき)として雇い入れた。
※駕籠舁(かごかき)=カゴを担ぐことを生業とする者
ある日のこと、某は富山から八尾へ戻ろうとして廣田村を通りかかると村人たちが集まっていて、何やら恐ろしそうな話をしているのがあちらからもこちらからも聞こえてくる。
某はそのただならぬ雰囲気に「人殺しでもあったか」と村人に尋ねてみると、村人は「この先の焼場に鬼神が来て、焼いてある人をはさみ食べている」と言った。
※焼場=火葬場
某は「では自分が見とどけてくるから誰か案内せよ」と言ったが、村人たちは恐ろしがって誰も着いてこようとはしない。
「ではその場所を教えてくれ」と某が尋ねると、村人は「これより一町上がって、左へ曲がって田圃道を二町ほど行き、右の方へ少し行くと、ずっと向こうの方に青白い炎が見えてくる。そこが焼場である」と答えた。
某は村人から聞いたとおりに道を進んでいった。ほどなく到着した焼場では、耳まで口の切れた青い顔の鬼神が、焼いてある人を箸ではさんで食べていた。
某も少し気味が悪くなってきたが、腰の一刀を引き抜き浮足にて鬼神に近づいてみた。鬼の顔をよく見てみると、どうやら女らしい。
某は大声で「そこに居る者は精のある者か!」と呼びかけると、女はびっくりして逃げようとした。
某は勢いよく躍り込んで女の襟首を掴み、「汝はなぜ悪戯ごとをして人々を惑わすのだ」と、女をしたたかに打った。
女は泣き出し、語りだした。
「私は杉田村の嫁です。もう年頃になったから、歯を黒く染めようと思へども、何の業か知らぬがどうしても染まらぬのです。
ある人から死人のあぶらで付けるとよく染まると教えて下さったから、こわこわここへ付けに来ているのです。どうぞご堪忍ください」と手を合わせた。
某はすっかり気抜けして、こう言った。
「お前の顔に青い火がうつり、上の頬まで染まっているから、遠方から見るとまるで鬼神のように見える。それによって『鬼神が出て人を食らう』と村中大騒ぎである。
左様なことなら早く隠れ忍んで行きなさい。人に見つかると鬼神嫁というあだ名がつく。」
若き平林某がもしこれを見届けなかったならば、話に尾ひれがついて、最後には素晴らしい怪談となっていたであろう。
鬼じゃねえじゃん!!!
お歯黒は既婚者女性の証。この女性の目的が純粋なおしゃれ心からくるものだったとは、果たして誰がこの杉田村の嫁を責められるでしょうか。
女子力の高さゆえの過ち・・・ といえばまあそうなんですが、焼場での絵面を想像すると恐ろしすぎて、杉田村の「鬼神姫」は正直ぼくのお嫁さんとしてはご勘弁願いたいなと思った所存です。
──── 完 ────
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