富山駅前の賑わいから遠ざかるように歩くこと数分。
あえて人通りを避けたようにぽつりと存在するBarがある。
そのお店の名はBar Old Saint Rickey’s。まだ今年の10月にオープンしたばかりの店だ。
Bar Old Saint Rickey’s(バー オールド セイント リッキーズ)
階段をのぼって扉をひらけば、うつくしい立山連峰とマスターの爽やかな笑顔があたたかく迎えいれてくれる。
初めてのお店というのは大なり小なりの緊張を伴うものであるが、入店してすぐにその緊張は安堵へと変わっていった。
朝焼けの立山と、
雪化粧をした立山。
日照時間が全国平均を大きく下まわっている富山。しかし、天気が悪かろうとも、たとえ夜になろうとも、ここに来ればいつでも眼前に立山を拝むことができる。
立山を眺めながらのお酒はまた格別なものとなるだろう。
オリジナル ビターズ ジンリッキー
マスターはぼくが初訪問であることをひと目で見抜くと、お店の看板カクテルである「オリジナル ビターズ ジンリッキー」を勧めてくれた。
Barはお酒の種類が多すぎるので、最初に何をオーダーすればいいのか悩む人は少なくないと思う。
初訪問だったり、Barやお酒の初心者にはとてもありがたいアプローチといえるだろう。
う、うまい・・・・・
このカクテル、ぼくが今までに味わったことのない味だ。
独特の個性的な風味がありながら統一感があり、得も言われぬ旨さを醸し出している。
このカクテルの個性を演出しているのが、マスターお手製のビターズである。
10種類のスパイスと果皮を一週間漬け込み、抽出した甘みと香りが味に奥行きとアクセントを生み出している。
このビターズのカクテルがどれほど魅力的かというと、初訪問した日に3種類制覇してしまったほど・・・といえば少しはご理解いただけるだろうか。
Barのお通しで出てきたものは乾き物かと思いきや、想像の上を行くスタイルだった。
その日によって出てくるものが異なり、お通しからもマスターのこだわりや丁寧な仕事ぶりが感じられる。
どうやらアポロは定番らしい。
三郎丸
次は何かウイスキーが飲みたい気分。
ドリンクメニューの充実っぷりは実にすばらしいのだけど、ふと前を見ると立山連峰をバックに構えた「三郎丸」と目があった。三郎丸は富山県砺波市三郎丸にある若鶴酒造が作るウイスキーである。
三郎丸のウイスキーは0とⅠの2種類があるのだが、既に終売となっているという「三郎丸0」をいただいてみることにしよう。
瓶に残る三郎丸0は、もう残りあとわずか。
これがなくなった時点で飲めなくなると聞くと、それがまた「侘しさ、ありがたみ」という絶妙なスパイスとなり、心で味わうお酒にもなる。
三郎丸0を飲んでしまったなら、「三郎丸Ⅰ」も飲まないわけにはいかない。
色は0に比べるとかなり濃くなっている。ぼくは最近三郎丸蒸留所の見学に行っているのだけど、そのときに「色が薄いと海外では売れない」という話を聞いていたので、世界的な市場も意識していると考えるのはごく自然なことかもしれない。
いざ飲んでみると、三郎丸0に比べて・・・
味わいが、豊かすぎる・・・!!
設備が大幅にアップデートされているのは目の当たりにしたけど、味においても格段にパワーアップしたといえるものになっていた。
しかも、この三郎丸Ⅰは普通には売られていないウイスキー。なんと、富山県内での割り当てはわずかに10本だったとのこと。
そんな貴重なものが飲めたのはまさにラッキーだったとしか言いようがない。
隠れ家
このお店は富山駅前エリアでもちょっとだけ外れに位置している。
飲みに行って偶然通りかかるような場所でもないので、このお店の存在そのものが隠れ家といえばそうなのかもしれない。
しかしまさか、お店のなかに隠れ家があるとは誰が想像できただろうか。
カウンターはゆったりとした座席の間隔になっていて、圧迫感を感じることなくお酒と会話を楽しむことができる。
カウンター席はまさにBarの醍醐味といえるだろう。
しかし、このお店の座席はカウンター席だけにとどまらない。
ソファー席はカップルや小規模のグループにお勧め。
そして、極めつけが・・・!
カウンターの奥の扉を開けると、
そこには・・・!!
隠れ家の象徴といえる、閉ざされた個室が存在していたのである。
最大10人までの利用が可能で、カップルが静かに愛を語らうもよし、グループでの宴会に興じるもよし、記念日やサプライズに利用するもよし、さまざまな場面で活躍する空間となるだろう。
料理についてはできる限り要望に応じてくれるとのこと。厨房の規模を超えるものに関してはテイクアウトなども活用しているそうで、とりあえず何でも相談してみるのが間違いない選択だ。
Barの晩御飯
このフードメニューのラインナップはBarの王道といえるものばかり。
「本日の燻製惣菜」はミートローフと鴨の燻製。
身はしっとりとしていて、燻製香は控えめ。これはウイスキーの減りがヤバい。
「マティーニをオーダーされると身構えますね」とマスターは語る。
マティーニはカクテルの王様といわれるだけに、作る側は気が抜けないということなのだろう。
今夜はもう完全に仕上がった。
今宵、思い残すことなし。
しかし・・・・・
やはり・・・・・・・
気になってしょうがない。
アレが・・・!!
Barの晩御飯とはなんぞ!!?
これを食べずしてもし突然死ぬようなことになったなら、一生悔いしか残らないではないか。
いくしかない・・・!!
待つことしばし
おわかりいただけただろうか・・・?
よもやこのような素敵なBarで、まさかのちゃんぽん麺とは・・・
マスター曰く、「飲みの最後に来る人が多く、締めに何か食べたい」というお客さんの要望に応えたものとのこと。
あるときは、カウンターに並んだ6人がちゃんぽん麺をすすっていたこともあるそうで、もしぼくが初訪時にその光景に出くわしたならば「え!?ラーメン屋だっけ!?」と、二度見、三度見することは不可避。
ちゃんぽん麺は評判が良いとのことので、しばらくは定番になるだろうとのこと。この日のBarの晩御飯は他にパスタもあったりして、締めの一品を食べたい人はぜひ聞いてみることをお勧めする。
これが令和時代のBarというものか。まさか、Barで麺リフトをキメる時代がやって来ようとは・・・
もはや思い残すことはない・・・
今夜は潔く去って、また来るよ。
人柄の結晶
マスターの高橋力也さんは東京で4年間バーテンダーの修行をした後に、地元富山でBarを開いた。
お店の作り、お酒、食べ物にはそれぞれ工夫が凝らされており、きっとそれは「来てくれたお客さんに少しでも楽しく過ごしてほしい」という、マスターの心配りや気遣いの結晶であるように思う。
とっても素敵で落ちつく空間なので、Barが好きな人も、Barに行ってみたいけど尻込みしている人も、お酒は好きだけどこれまでBarに縁がなかった人も、ぜひ一度訪れてみてほしい。
ゆったりとした時間の中で、お酒とトークと立山を存分に楽しんでいただけることだろう。
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