国内外から、多くの観光客で賑わいを見せる飛騨高山の町。
日は緩やかに傾き、高山の町が杏色に染まるにつれ、徐々に町から人影が消えていく。昼間の賑やかしさがまるで陽炎だったかのように、静けさと寂しさが入り交じる飛騨高山の夜。
そんな高山の夜に、暗闇に染まることをまるで拒むかのような、ひときわ輝きを放つ一角が存在するのをご存知だろうか。
高山まちなか屋台村 でこなる横丁
「でこなる」とは
でこなるとは高山の方便。
でこなる→でこうなる→でかくなる
でこなる横丁は高山市朝日町にあり、最大21店舗からなる屋台村の名称。現在は天ぷら・立ち飲みワインバー・寿司バー・ジビエバー&グリル・餃子・たこ焼き・ラーメン・焼き鳥・地鶏、さらに射的場や手裏剣道場などの店舗がある。
今月中だけでも数店舗オープンするとのことで、今後ますます活気づくことは間違いなしだ。
でこなる横丁二軒目は、天ぷら屋さん〜。ここからは日本酒〜。店主のおまかせ&飛騨とらふぐ〜。 pic.twitter.com/XscGbj1ZOz
— 華霊迦来(かれいからい・かれい♂) (@kareikarai) 2016年4月2日
さて、夜の高山散策へ。飲み屋街の朝日町を抜けると、でこなる横丁という屋台村があり、その中に飛騨高山餃子総本山を発見。
高山餃子の焼きは羽根つきまくりの板みたい(笑)。中は粗びきミンチで肉々しく、こうじ味噌のたれと合います。 https://t.co/c7J1bujlvv— センベロ隊長 (@1000berotaicho) 2016年3月7日
飲み歩き開始!
現地に到着後、とりあえずどんな感じなのかひと通り見て回る。すると寿司店の前で座っていた男性から「ここおいしいよ」と声を掛けられた。
真に不覚ながらこのあるのん、実は既にホテルで夕食をとっていた。「寿司は後から腹にくる」ことを長年の100円寿司通いにより経験してきたので、地元民からのせっかくのおすすめではあったが、またの機会にさせていただくことにした。
たこ忠(たこやき)
入る店は事前にある程度目星はつけていた。こちらのたこ忠はそのお店のひとつ。ガイドブックでその存在を知った、世にも珍しい「たこやきのコース」をオーダーする。
このお店では普通のたこ焼きだけでなく、コースたこ焼きや変わり種たこ焼きなどがあり、「大阪や東京にもこんなのはない」という珍しいたこ焼きが食べられるのが大きな特徴だ。
たこ忠のたこ焼きが食べられるのは、でこなる横丁だけ。いわば、たこ焼き界の少年ジャンプと言っても過言ではないだろう。
まず醤油とソースのたこ焼きが出てきた。外は固く、中はいい感じにトロリとして超アッツアツ。食べかたを頑張らないと大ピンチに。
そして次に出てきたのがこちらのたこ焼き。
タレが独特で、豆板醤・ポン酢・ゴマ・醤油と、門外不出の何かを合わせた秘伝の特製ダレ。(実は聞いてたのだが酔っぱらって忘れたのは誠にテヘペロである)
このタレだけ舐めてても肴になりそうである。サッパリとした酢の酸味とゴマの風味と調味料のコクがなんとも食欲を増進させる。野菜と合わせてもよさそうだ。
腹に余裕がないことを伝えてあったので、次なるお店は店主の薦めで立ち飲みワインバーに行ってみることに。
目ざとく発見したスタンプカードにハンコを押してもらう。
よ っ つ !
よく見かけるスタンプカードはスタンプが10~15個も必要だったりして、なかなかコンプリートまで手が届かない。しかしこちらのスタンプはわずかに4つと、ワンチャン一夜で狙っていける数だ。この手の届く感じは、スタンプ界のAKB48と言っては過言だろうか。
立ち飲みワインバー Dios
こじんまりとした店内ながらMAXで20人は余裕という、スタンディングスタイル恐るべし。立ち飲み形式のメリットはお客さんにもあって、店内を自由に移動できるというのもそのひとつだ。
複数の初対面のグループが自由に入れ替わりながら盛り上がることがよくあるのだそうで。想像しただけで実に楽しそうだ。
お値打ちワインが揃う。重いものはちゃんと濃いし、軽めのものでもしっかりとした味のおいしいワインが楽しめる。
お酒を飲むと何か食べたくなる法則が発動。
自家製ポテサラ。ちゃんとつまみになる味付けのポテサラなのが嬉しい。
しばらく飲んでいるとでこなる横丁のオーナーが現れ、さらに他のお客さんも交えて貴重で楽しい時間を過ごすことが出来た。ホテルに閉じこもらなくて本当に良かった。
こちらで伺ったでこなる横丁についての話のごく一部を、箇条書きでご紹介させていただこう。
・夜に外国人を多く見かけるのは、外国人は夜の食事を付けず安いプランで泊まっているから。
・夜も活気ある町にしたい。
・でこなる横丁の客層は今のところ9割が地元市民。
・出店者絶賛募集中。
・でこなる横丁に出店するには込み込みで150万から可能。(チャレンジプランもあり)
・高山市では現在新規事業者向けの特定創業支援事業補助金があり、限度額100万円の交付がある。
飲食店を経営したい、独立したい人にはビッグチャンスではなかろうか。新たに店を構えるとなると大変なお金がかかるものである。
このでこなる横丁屋台村では出店者同士で話し合う『村民会議』や、他県の屋台村を見て回る『県外視察』が行われるなど、横のつながりもバッチリだ。
オーナーのお話からも起業家を育て、地域の発展を心から望んでいることがひしひしと伝わってきた。
ちょっと揺れるオトコ心。
もしぼくが店を出すとしたら、いったいどういう店になるのかな…。
ではここで、女性客から伺った夫婦円満の秘訣をここに披露しよう。
夫婦円満の秘訣は「LINEで会話」。
確かにこじれることはない…かもだが、コミュニケーションもまた取れないのではなかろうか。しかし家庭のあり方は家庭の数だけあるので、我々がとやかくいうことではない。
さらに次なるお店へ
このあるのん、でこなる横丁に行った際にはぜひ入ってみたいあるお店があった。その旨をワインバーで伝えると、「そのお店に入ったら、最初に“もうお腹はいっぱいなので”と強く伝えて下さい」と言われ、いまいち要領を得ないままワインバーを後にした。
さて、ちょいとここで小休止をば。
手裏剣道場
1回300円で、ゴム製の手裏剣を5回投げることができる。
ここでは老いも若きも誰しもが童心に返り、皆が笑顔になれる場所。なんなら憎い上司の顔を思い浮かべながら投げてもいいし、LINEでしか会話しないご主人の顔を思い浮かべながら投げてもいい。
通常の忍者は1点。上部の分身忍者を当てると2点。結果は2点であったが、1回でも当てればちゃんと景品がもらえるのが嬉しい。
ここで過去に9点取ったことがあるという猛者が登場。9点の景品はなんとラジコン!あなたが飛騨忍者でござるか。
せっかくなので飛騨忍者の技を見せていただこうと見学するも、結果はいまいちなご様子。どうやらプレッシャーには弱いらしいとのこと。さすが隠密行動がモットーなだけあって他人に見られることに慣れていない。流石でござる。
射的場
コルク弾5発300円。ありがたいのは手裏剣にしろ射的にしろ、スタンプをそれぞれ押してくれるところ。スタンプがコンプしやすくなること請け合いだ。
事前にちゃっかり射的の攻略法は聞いていた。
射的攻略法
1. できるだけ身を乗り出して距離を近くする。
2. 弾はできるだけまっすぐ詰める。
1.は身長があるほど有利ということに。
2.はなるべくまっすぐ飛ぶようにとの工夫だが、そもそも弾の形が均一でない気がするので気休めかも知れないが、意識しないよりはしたほうがよいだろう。
さあ、どの景品を狙うか……
ん……こ、これは……
おおおおっ!?
0番の景品というのが、
なんと、歌っ!!店主の生歌っ!!!
気になってしょうがないので0番を狙いまくるぼく。
しかしレア物は的が小さく弾道もブレるので、弾は空を切るばかり……
するとここで、先ほどの飛騨忍者氏が再登場!
なんと飛騨忍者氏、このお店でも景品の最高峰であるラジコンをゲットしているという。
「ああ、さっき僕歌ってもらいましたよ」
という余裕のセリフ。あなたがゴルゴ13の末裔か。これはやはりその腕前を拝見させていただかねばなるまい。
おっと彼の後ろに立ってはいけない。そしてゆっくりだ、ゆっくり動かねば。
「プレッシャーに弱いからな~」と言いつつしっかり景品をゲット。さすがゴルゴ13だけあってプレッシャーには強いようだ。
モーガンズ・ジビエバー&グリル
何を隠そう、このお店が一番気になっていた。
ハワイ郷土料理!ジビエ!
なぜ高山でハワイ料理なのか。意味はよくわからないが、この面白さは尋常ではない。お店に入るなり聞いてきたとおりに「あのぉ、もう既にお腹はいっぱいなので~」と伝えてみる。
メニューには猪や鹿肉を用いたジビエ料理、オーナーが日系ハワイ人ということなのでハワイ料理、各種アルコールにはおしゃれなハワイアンカクテルなどもあり、実に魅力的で珍しい料理の数々に興奮の色が隠せない。
鹿肉が食べたい
なかなか食べる機会のない鹿肉を食べたいということで、鹿のレバー串焼き(500円)にするか鹿のハツの串焼き(700円)にするか、これは非常に悩みどころだ。なので、より普段縁のなさそうな鹿のレバーをオーダー。
え?鹿のハツもついてきた…
まさかこれってサービス…?しかし、値段の高い方がサービスでつくなんてありえるのだろうか…。
これらの串焼きは牛乳に漬けて臭みを抜いた後、スペシャルテリヤキソースを絡めて焙った逸品。確かに臭みもなく食べやすい。ソースからほんのり異国の味わいが漂うのもまたたまらない。
ワイルドMGM スキャンピ ハーフサイズ ¥1,000
一番人気のメニュー。嬉しいことにこのお店では大抵のフードメニューにハーフサイズがあるので、色々食べたい人には実に嬉しい配慮である。
大きな海老にガーリックとレモン、フレッシュペッパーのフレーバーと、フレンチソルト、パルメジャーノ・レッジャーノとケイパーのテイストを加え、これがバジルとアンチョビのパスタの上にドーンと乗っている豪華なパスタ。
テキサスチリ
「ちょっと味見してみます?」と言われるがままに出されたテキサスチリ。
この深い味わいの要素は何なのか。すごく辛そうな味っぽいのに辛くない。旨味だけが存在するという印象。これはオーナーが日本で納得できるテキサスチリがなかったので自分で作ったというもの。
さらにしばらくして「これ、よかったらどうぞ」と言って出てきたこちらのピクルス。
この味には衝撃を受けた。今までに食べてきたピクルスとはいったいなんだったのか。これまで食べてきたものはやたら酸っぱいものばかりで、おいしいピクルスってあるんかな?と思っていただけに、このようなピクルスがあるということを知れたのは素晴らしく貴重な体験だった。
アメリカの有名なホテルのレシピとのことであるが、酸っぱい要素は感じられず、スパイスの絶妙な調和でとても元がキュウリとは思えない別次元の食べ物に変化している。
しかし、このピクルスまでもがサービス…なのか…?ワインバーで言われたことがフラッシュバックする。
カクテルもうまい
クラシックマーガリタ ¥800
ロングアイランドアイスティー ¥1,200
ここで空のカクテルグラスにキュウリとレモンのスライスが入る。おそらく隣のお客さんが注文したものだろう。これからいったい、どんなカクテルができるのだろうか。
ハワイ出身の日系人オーナー Mr.モーガン
写真では伝わりにくいが、筋肉ムキムキである。このお店がオープンしてからというもの、ほぼ休んでいないらしく、休みがないことを嘆いている理由が心身を休めたいとかでなくトレーニングする時間がないからという点には驚かされる。
このカクテルグラスのキュウリとレモンを、すりこぎのようなものを用いMr.モーガンの鋼のような筋肉で練り潰しはじめる。
「うわぁ、キュウリすごい」とつぶやくと、それをオーダーしたと思われる人が反応した。
「え?キュウリ!?俺キュウリ食べれないんだけど!!」
「ええ?なんで注文したんですか?」
「いや、メニューだけ見ておいしそうだったんで…どうしよう!…でも飲みます!」
大丈夫かなあ。友人にガチなアンチキュウリ勢がいるけど、何かにキュウリが入っていようものなら「他の食材にキュウリの匂いが移ってるから全部食べられない」とか言い出して、なかなかにやっかいだったりするのだけど…。
出来上がったカクテルを恐る恐る口にする男性。
「うまーーーーい!ぜんぜんキュウリの味しない!!」
「えええ?そんなまさか!?」と疑いの眼差しを向けたところ、
ウインドワードブリーズ ¥1,200
「よかったらどうぞ」
なんと、味見させていただのである。
「うまーーーーい!ぜんぜんキュウリの味しない!!」
奇しくも同じセリフを吐いた。
しかしなんできゅうりの青臭さを感じないのか不思議。これは一体どんな魔法を使っているのだろうか。
「Mr.モーガンの筋肉で細胞ごと粉砕されたのかな」と個人的には思いたいのであるが、実際のところはレシピや使っている素材が良かったりするのだろう。これも驚きの一品であった。
もうさすがにお腹も酔いもいい感じ。もうそろそろホテル…
お店の人「これ、よかったら皆さんでシェアして食べてください」
ウズラの丸ごとから揚げ ¥1,000(ハーフ600円)
キタコレである。
隣の席の女性が、これを一口食べた瞬間に発したことば。
「かわいそーーーー」
「ズコーー!」あるのんの腹筋はあえなく崩壊。
下味がしっかりついてて揚げ具合も素晴らしく、ウズラという珍しさも相まってまったく逸品にもほどがある。
もう身も心も十分すぎるほど充分に満たされ、いよいよお店を後にしたのであった。ごちそうさま。
※いつもこのようなサービスが受けられるわけではないということをご了承ください。
帰る前に先ほどのワインバーへ再び顔を出す。
ぼく「最初に伝えたんですけど、見事にやっつけられてきましたー!」
と伝えると、お店の人もお客さんも「やっぱりね~」とばかりに、店内は笑いに包まれたのであった。
お店の人もお客さんも皆とても人懐っこくて人情があり、飛騨高山の懐の深さを感じつつにぎわい横丁を後にした。次回高山に来るときは、ホテルに夕食を付けないプランでやってくることを深く心に誓いながら。
こうして、でこなる横丁のキラキラとした夜は更けていく。人と人が連なって輪となり、それはやがて大きなひとつの和となって。
おいしい料理にお酒、素敵な出会いに乾杯!!
※「モーガンズ・ジビエバー&グリル」は残念ながら現在閉店となったようです
でこなる横丁
住所:岐阜県高山市朝日町24番地
でこなる横丁 公式WEBサイト
JR高山駅より徒歩約9分※駐車場もあり
他の高山旅行記はこちら
コメント
コメント一覧 (6件)
これは素敵な記事でした(・Д・)ノ
ほっこりする人情味のある街ってのが伝わってきますな〜
とるきちさん、ありがとうございます!
これ、脚色とかなしですからねw
他にも行ってみたいお店はたくさんあるし、
高山の夜はホテルにこもってる場合じゃないということが今回よくわかりましたw
とるきちさんも今度ぜひどうぞ!
『クラシックマーガリタ』
涼しそうで!?美味しそう(*^ー◇ゞゴクゴク (*~o~)□プハァ!!
たこ焼きもいいねっ~
私は、冷凍のたこ焼きをチンして大根おろしとネギをかけてポン酢で食べるの
サッパリして美味しいよぉ~えっ!知ってるカナ・・・・
射的は楽しそうやぁ~
温泉地とかいって浴衣で・・・・・・憧れのシチュ(〃艸〃)ムフッ
『変態酒場 ある呑』がオープンしたら御祝いに駆けつけるよ!!!ガンバレ
マルガリータのことなんだけどねヽ(´エ`)ノ
そんなゴクゴク飲めるお酒じゃないよ?w
そういうたこ焼きの食べ方はしたことないなあ。でもおいしそう。
今度やれたらやるね!(行けたらいく的なアレで)
浴衣で射的……ドキドキしますな(*´д`*)ハァハァ
「いや~ん♡はだけちゃうううう」(あるのん談)
変態酒場はドリフ氏におまかせしますわ^^
え?アパちゃま「スナックゆきずり」はじめるって~!?w(実際に富山にあるお店だけどw)
ん?
呼んだ?
Mr.モーガン氏のサービス精神
半端ないですな!!
お酒は飲めませんが
酒場は好きでして
カウンター席で調理されてるのを
見るのが大好きなんですよね~♪
で、店主とお喋りしてると
「これも食べてみて」とか
色々いただけたりします。
過去何度か
店主のオススメを食べ過ぎて
お腹壊したことありますw
あれ?呼んだっけかな(;゜3゜)~♪ピュー
酒場には酒場独特の雰囲気がありますからね。
お酒が飲めなくても酒場の楽しさがわかるとはさすがです。
食べ過ぎてお腹壊したって、子どもか!(笑)
ドリフさん人懐っこそうだから、すぐ打ち解けるんでしょうね~(笑)