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【居酒屋 秀】魚津の歓楽街を見守ってきた隠れた名店@酒場徘徊記

富山県内にある「柿の木割り」という飲食店街をご存知だろうか。

西は高岡市の「桐木町」、富山市は「桜木町」、東は魚津市の「柿の木割り」をもって、富山三大歓楽街ということになっている。

桐・桜・柿と、木の種類で表現しているのも特徴的だ。

魚津駅前周辺を初めて見たときはその飲食店の多さに驚いたものだ。特にスナックのネオンがひときわ目立つ光景は桜木町を思わせるものがあった。

この飲食店街の規模は新川広域圏(魚津・黒部・入善・朝日)では最大といえるだろう。

なぜ新川広域圏で魚津駅周辺がひときわ栄えているのか。

それはかつて魚津では遠洋漁業が盛んだったことで、漁師たちは海から戻ってくると金を握りしめてお酒を飲みに行ったのだ。

現在の柿の木割りには200店ほどのお店が軒を連ねているとのことだが、かつてはより大きな賑わいを見せていたという。

ある者は赤ちょうちんに吸い寄せられ、ある者はまばゆいネオンの光に吸い込まれていく。

ネオンの灯る柿の木割りを歩いていると、まるで海の男たちの歓びと悲哀が入り混じったような不思議な歴史の深みを感じさせるのである。

居酒屋 秀

そんな柿の木割りの一角に、ある小さな赤ちょうちんのお店が存在する。

目立たない裏通りにひっそりと佇む飾り気のないその外観は、きっと目に入ったとしても意識することなく素通りしてしまうことだろう。

この「居酒屋 秀」というお店は友人のJUNさんに前々から伺っていたお店で、今回もJUNさんに連れてきてもらった。

「今回も」というのは、このお店はカウンターのみの予約不可のお店であるが、前回訪れたときは満席で入れなかったのだ。時間は夜の10時をまわっていたというのにだ。

秀を諦めた小雨の中、入れるお店を探し歩いてやっとでありつけた敗北のビールの味はいつもよりほろ苦く感じられた。

しかし、今回は運良くギリギリで入ることができた。今回も10時をまわっているというのに、まさに不滅の人気っぷりではないか。このお店のいったい何がそんなに人を寄せ付けるのだろうか。

居酒屋秀はご夫婦2人で切り盛りされているお店である。寡黙そうなご主人と快活な奥さんの取り合わせはまるでワインとチーズ、ビールと枝豆、キレンジャーとカレーほどに相性抜群といえるだろう。

店内はカウンターが10席ほどのこじんまりとしたお店で、奥には座敷もあるが普段は使用されないらしい。

まずは何を飲もうかなとカウンターの上を眺めてみると、驚くべきものが目に飛び込んできた。

 

え・・・?

 

 

女 乳 !!?

 

な、なんだそれわ!!!!!

 

超超超飲んでみt・・・・・コホン。まあなんなら飲んであげてもよろしくってよ。

正面上部にもデカデカと「女乳」が!!!!

超気になるじゃないか・・・ JUNさんに聞いてみてもよくわからないご様子。

ついに、「にょにゅう?めちち?とやらをください」・・・というセリフが喉まで出かけたその瞬間。

あるのん
(もしや、めにゅう・・・?)

ハッ・・・ そうだ、そうに違いない。あぶねえあぶねえ・・・ 富山紳士として気づきあげてきた地位があやうく根底から揺らいでしまうところだった。

気を取り直してまずは生ビールを2人分注文すると、すぐに付きだしが運ばれてきた。ほほう、これはうまそうな里芋のみそ煮っころがしではないか。

ねっとりとしてコクがあり、ほんのり香る柚子の風味がなんともいえない上品さを醸し出している。

付きだしのうまい店にハズレなし。

期待がより一層高まってきたところで、じっくりとメニューを眺めてみることにしよう。

なっ、何だこの値段設定は!!?

もつ煮250円? 焼きうどん300円? 酒一合250円?

昭和から時が止まったかのような価格設定に、まばたきをすることも忘れて食い入ってしまった。

あんばやし180円

富山人にとってあんばやしは思い出の味だ。

縁日の屋台でルーレットをくるくる回し、もらえる本数に一喜一憂したあの頃を懐かしむ。

このあんばやしにはネギが加えられ、甘辛い味噌とネギのシャキシャキ感がなんともよくビールに合うんだよ。

なんとも郷愁を感じさせる味ではないか。

すり身焼き 250円

すり身揚げというのは居酒屋の定番メニューだが、すり身焼きというのはなかなかに珍しい。

ここはもう好きなように醤油を垂らしていただこう。

ここで1杯目の生ビールが無くなりそう。さて、次も生かなと思っていたところ・・・・

 

JUN「お酒を熱燗でお願いします」

 

何いいいぃぃぃ!!?

彼は人を気づかう男。もしかしたら最初から熱燗が飲みたかったのかもしれない。

寒い季節の「とりあえず生」も考えものかもしれないな。

そんなことを考えながら、ぼくも熱燗に乗っかることにした。

刺身 時価

鮮度もよし、種類も多く、味も申し分のないうまさだ。

季節やその日によっても魚は異なり価格も時価であるが、後から計算してみてもリーズナブルな価格には違いない。

 

ここで新規のお客さんがやってきた。

お客さん
3人って入れる?
あるのん
(どう見ても入らんよなあ)

これほどリーズナブルでおいしくて夜中の12時半までやっているお店なので、柿の木割りの酔っぱらいたちが〆を求めにやってくる。

秀は席の予約ができない。この時間帯で秀にありつけないとなると、後の選択肢はかなり狭まってしまうから客も真剣だ。

しかし席の空きがないのはどうしようもなく、客は残念そうに慣れたように店を後にした。

酢のもの 100円~500円

酢のものを注文したときに、大将が「◯◯と◯◯どっちにする?」と聞いてきて、それがよく聞き取れなかったので聞き直した。

しかしやはり聞き取れず何度も聞き直すのは失礼と思い、唯一聞き取れた方の「かに」でお願いしてみた。

かに酢と聞いて、どんなものを想像するだろうか。多くの人は「キュウリの酢のものにかにのむき身が乗っている」ものを想像するのではないだろうか。

なんと、カニフォークが付いてくるのが秀流らしい。

カニをほじほじしながら食べるかに酢の楽しさはまた格別だ。

 

ここでまた新客が現れた。

お客さん
うぇ~~~あ゙うぇ~~
あるのん
(とんでもねえ酔っぱらいがきた)
お客さん
5人だけど入れるぅ~ぅああ~?
あるのん
(どう見ても入れんやろ)
お客さん
じゃあ3人は~?
あるのん
(入らんて・・・てか残り2人は斬り捨て御免かよ・・・)

これがもし富山市の「既に酩酊の方は入店ご遠慮ください」のあの居酒屋だったら追ん出されるぞ・・・ と思いながら見ていると、とても暖かく丁重に断られていた。

柿の木割りの夜を長年見守ってきた居酒屋秀の懐は広くて深い。酔っぱらいに対してとても寛容であると関心するしかなかった。

もつ煮 250円

最後にJUNさんが頼んだものはもつ煮だった。しかも1つではなくちゃんと人数分。

そういえばJUNさんはことあるごとに「秀のもつ煮が~」とか「秀のもつ煮を~」とか言ってたっけ。

JUNさんがぼくにずっと食べさせたかったもつ煮で〆させようとは、なかなかに粋な計らいであり期待に胸が高まろうというものではないか。

もつ、こんにゃく、ネギが椀の中に所狭しと押し込められている。とても250円とは思えないボリューム感だ。

ぬおおおお!!!?

 

甘ーーいっ!!!こんなに甘い味つけの料理が富山にあろうとは。

 

雪が降る寒い地方の料理はどちらかというと塩辛い味付けが多く、甘い味つけの肴は酒飲みに敬遠されることが多いように思う。

しかし・・・ これはなぜだか不思議にクセになる旨さがある。

ちゃんとお酒にも合うし、呑み疲れた胃袋と肝臓をリフレッシュしてくれるような鮮烈さを持ち合わせている。

秀のもつ煮は〆にふさわしい一品だった。次回もぜひこれで〆たいと思う。

既に日付は変わり人もはけてきたところで、大将やおかみさんから色々なお話を聞くこともできた。

寡黙かと思われた大将は笑顔の素敵な洒落っ気のあるお人だった。まあそりゃ「女乳」なんてユーモアを発揮できるお人だものね。

トイレには桃用漢字なるものも貼られているのも見逃せない。

こういう遊び心を発揮できる大将と、このユーモアを理解してあげられるおかみさんは、まさに柿の木割り一のおしどり夫婦といえるのかもしれない。

このようなお店が富山県内にあるというのはなんと幸運なことだろうか。

居酒屋秀は今後も隠れた名店として、柿の木割りの酔っぱらいたちの胃袋と肝臓、そして心をも満たし続けてくれるに違いない。

次もすんなり入れるよう、今年の初詣の賽銭ははずむことにしよう。

居酒屋 秀

住所: 富山県魚津市上村木1丁目6-605-1

電話:0765-22-2944
営業時間:17:00~24:30

定休日:火曜日

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