こんにちは、富山人あるのん@_arnon_です。
2019年11月、元ドン・ペリニヨンの醸造最高責任者が「富山で日本酒を造る」という衝撃的なニュースが駆け巡りました。
富山県立山町に蔵を建設し今秋オープン予定とのことですが、リシャール・ジョフロワ氏がプロデュースしたお酒は既に世に出回っています。
「まだ蔵も出来てないのになんでお酒が売れるんだ?」という素朴な疑問が生じないでもないですが、今回はそのお酒を飲む機会に恵まれましたのでリポってみたいと思います。
IWA5
まず価格ですが、720ml入で14,300円(税込)となっています。
送料1,100円(税込)を含めると15,000円を超えてきますね。
ぼくがこれまでに買った日本酒で一番高いのは720mlで1万円ですが、そのとき飲んだ印象としては「美味しいけど、日本酒って値段に比例してうまいのは5,000円までかなあ」というものでした。
その後に飲んだ1万超えの日本酒の感想も同じようなものでした。
ぼくの庶民的な舌が追いついてないだけという話もありますが、高級な日本酒って高価な酒米を削りに削って低温発酵でじっくり醸し十分な熟成を経てから出荷されるので、雑味や濁りのない水のように綺麗な味になっていくんですよ。
それはとても美味しいものなのですが、逆に言うと「没個性」になっていくとでも言いますか、蔵の特色や個性が薄れていく気がするんですよね。
・・・と言ってもそれは20年近くも前の印象で、最近の高級日本酒がどうなっているのかはわかりませんが。
このIWA5のボトルデザインはオーストラリア出身の著名プロダクトデザイナー、マーク・ニューソン氏によるもので、ラベルデザインは書道家の木下真理子氏と、アートディレクターの中島英樹氏が手掛けたとのこと。
裏ラベル
裏ラベルを見ると「2021年、自社蔵をオープン予定」と書いてあります。
じゃあこのお酒は誰がどこで作ったものなの?という疑問も湧こうというものですが、製造場所や販売者が「桝田酒造店」となっています。
つまりこのIWA5のお酒は富山の地酒「満寿泉」が決定的に大きな関わりを持っているものと推察されます。
桝田酒造店の蔵元である桝田隆一郎氏とリシャール・ジョフロワ氏には深い親交があり、富山に蔵を建設することになったのもそのことが大きく影響しているとのことです。
IWA5は自社蔵で醸されたお酒ではありませんが、元ドンペリの醸造最高責任者リシャール・ジョフロワ氏の卓越したアッサンブラージュ(ブレンド)の技術と経験が日本酒でどう表現されるのか、日本酒をブレンドするというのはどういうことなのか。
このお酒によって氏が見据えている視界の一端を体験できるというのは実に興味深いことです。
IWA5に込められた意味
IWA5のIWAは自社蔵のある「白岩」地区からとられたもので、5は「5種類の酵母」を意味しています。
5種類の酵母、異なる産地で栽培された山田錦・雄町・五百万石によって数十種類もの原酒を作り、それを氏がオーケストラの指揮者のように緻密にコントロールしていくのです。
フタを開けてみてびっくり!
このフタはガラスでできています。品質に影響を与えないようにでしょうか。
他の日本酒と比べて明らかに口径が大きく設計されていて、このフタは他の日本酒のビンにはまらないですね。
そしてこのビン、厚みもかなりあるようで色が真っ黒。一切の光を通さないマンのこだわりを感じさせます。
そしてよく見ると瓶のあちこちに天然のウエザリングが・・・ さすが冷蔵庫で雑に1年間寝かせていただけのことはあります。新聞紙にでも包んどいてくれや。
ていうか、キズが入るビンって・・・?ビンってこんなわかりやすいキズが入るもんだっけ?特注品にもほどがあるというか、ビン1つとってもやたら特徴的だなあと感じさせられます。
飲んでみた
何しろ冷蔵庫で1年ほど寝かせてたし、裏ラベルを見ると製造年月日が2019年8月となっています。
日本酒の製造年月日はビンに詰めた日付を意味します。つまりビンに詰められてから既に2年近くが経過しているわけで、購入したときの味と現在の味はまったく同じものではないはずですが、熟成に耐えうる品質であることを信じていただきます!
ワイングラスだとほぼ無色透明ですが、うっすらと色づいています。では!
あ~~~・・・・
なるほどなるほど、そういう世界ね。
これはとっても不思議な体験です。とっても心地よい飲み口で、まず酸味が立ち上がってくるのですが一本筋の通った酸味なのにとても線が細く、それでいて存在感を感じさせる力強さも兼ね備えています。
滑らかで落ち着いた味わいの中に白桃っぽいアロマがあって爽快感を感じさせますが、そもそもこのお酒は味の表現が甚くむずかしい・・・。
全体的にはとても飲みやすい綺麗な酒質なんですが、あらゆる要素が複雑に絡みあって味が形成されており、「不思議な体験」と書いたのは単一の日本酒からは絶対に生まれ得ない味であることがわかるからです。
この不思議な体験には既視感があります。それは富山県内16蔵のお酒をブレンドした「富山ブレンド」を飲んだときのこと。
富山ブレンドは一升瓶で2,000円+税という価格でIWA5とは価格帯に天と地の差がありますが、この富山ブレンドも単一の日本酒からは生まれ得ないであろう面白さを有していました。
日本酒のブレンドって飲んだ経験がないから脳がバグりやすいのかもしれない。
※富山ブレンドは終売しました
このIWA5は香りがいいだとか飲みやすいだとかそういう次元の味ではありません。柔らかくもあり重厚でもあり、何重にも重なり合ったハーモニーは高貴な味へと昇華しています。
まとめ
かつての体験から1万円以上する日本酒にあまり興味がありませんでしたが、このお酒は確かに1万円以上しても納得するしかなく、リシャール・ジョフロワ氏が切り拓いた日本酒の新しい世界を歓迎したいと思います。
IWA5は完成されたレシピを持たず、実験的なプロセスを辿りながら進化していくお酒。今回飲んだものは昨年販売されたアッサンブラージュ1、今年発売されたIWA5はアッサンブラージュ2ということで、また違った味わいになっているものと思われます。
日本酒好きの方は、アッサンブラージュによって生み出された新しい世界の日本酒をぜひ体験していただけたらと思います。
気軽に買えるお値段ではありませんがけっして無駄に高い商品ではありませんので、何かの記念日や特別な贈り物に、または宝くじやギャンブルなどの臨時収入の際にご検討ください。
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