総曲輪エリアが今熱い。
酒飲みにとっても総曲輪周辺は見逃せないスポットとなった。
特に昼飲みができる飲食店が増えたのは個人的に嬉しい限りである。
総曲輪飲食街の入り口となる「総栄通り」に足を踏み入れる。
ふふ、わかってるさ。総栄通りの名前の由来くらい。みんなも想像つくだろ!?
総田栄一郎さんが出資して作られた通り。きっとそうなんだろ?
※そんな人はいない
肉を焼く匂いが悪魔的に魅力的なショーグンバーガー、いくつもの飲食店が集まる総曲輪BASS、日曜は14時から営業している笑色、気軽に焼き肉が楽しめる大衆酒場ハラミセンター、一部の店舗では昼飲みも始めたあまよっと横丁、千石町にオープンした猫八など、いずれも近年にオープンした店ばかり。
しかし総曲輪エリアには、これらのはるか昔から営業している昼飲みの聖地というべき居酒屋が存在している。
その店は、居酒屋「丸一」。
ここだけ時が止まったかのような佇まいの店が、今もなお昼間から暖簾を掲げている。
店の前に設置された看板は、一見どこにでもありそうな食堂のメニュー構成だ。
しかしこれが普通の食堂と思って入ると、きっとその光景に面食らうことだろう。
この丸一は本格的な昼飲みができる店として酒飲みの間では有名な店であるが、恥ずかしながらこの小生は今だ未訪問であった。
このすぐ近所にある両国も昔からその存在を知っていながら、「まだ早い」、「オヤジたちの聖域を汚してはいけない」と勝手に思い込んでなんとなく避けていた。
しかしある時、「もう十分じゃない?」と言われてふと鏡を見てみると、なるほど・・・ そこには立派な中年が写っていた。
自分にとって丸一は両国同様「オヤジたちの聖域」であったが、両国に行ったオヤジの仲間入りをした身としては行かない理由などもはやなかった。
ガラガラガラ・・・
戸を開けると、カウンターは既にほぼオヤジたちで埋め尽くされていた。
なんとか空いている席を見つけ、椅子に座ろうとしたその瞬間、ある重要なことを思い出した。
「しまった!ATMでお金おろしてくるの忘れた!!」
財布の中を見てみると、残金は5,570円くらい。
通常の一人飲みには十分な金額ではあるが、調子こいて食べて飲みまくると心配な金額ではある。
まあそれぞれの値段がわかってれば計算できるしと思ってメニューを見てみると、中には金額の書いてないものもあり、さらには時価なんてものもある。そして値段は税別表記だ。
レジ周りを見てもカードに対応してそうにもない。これは慎重にならざるを得ない・・・
これより、壮絶なチキンレースの幕開けとなったのであった。
メニュー
ご飯ものは午後2時までの提供。
このメニューだけでもなかなかの充実っぷりだが、さらにこれら以外にもホワイトボードや店内の札に掲げられているので、まずはじっくり見て戦略を立てたいところ。
アルコールは一通り揃っている。日本酒の種類はそれほど多くはないものの、ツボを得たラインナップになっている。にごり酒があるのもなかなか粋ではないか。
ボトルキープがあるのもさすが常連の多い店という感じだ。
席につくと女将さんが間髪入れずに何を飲むか聞いてきた。
一週間ぶりのアルコールということで、まずは生ルービーから。
んぐ、んぐ、うんめえええええ!!!
乾いた体に染み渡るようなうまさ。こちとらこの瞬間のために生きてんだよ。
付き出しは白えびの入った煮物。大根はとろとろ。
付き出しがいくらかはわからないが、あるのんスカウターによると300円ほどだろうか。
予想残ライフ:4615
さてと、まずは何からいくかな。
ふ~む、なるべく他店になさそうなものがいいな。
一品目は「かつ玉とじ」。
ライフは5550しかないというのに、いきなり値段不明のものを注文。
とんかつが1,000円することを考えると、かつ玉とじはそれ以上になるのではないか。1,200円・・・ いや1,300円くらいだろうか。
いやでも、これはそこまで高くはない気がする。
メニューをよく見るとカツ丼が800円なので、かつ玉とじがカツ丼の上の部分であるならばそれ以下の金額になることも考えられる。
当然いちいち値段を聞くなんて野暮なことはできない。
とろとろの玉子はほんのり甘く、たっぷりのダシでひたひたになっている。
そしてちょっと脂身の多めな豚肉が、なんとなくジャンクっぽくてビールが進む。
ややもすれば一人では少々しつこくなってきそうではあるが、そこは三つ葉がなんともいいいアクセントになっている。
予想残ライフ:3735
ぼくは刺し身大好き人間だが、初訪問かつ一人のときは刺し身盛りをオーダーすることは少ない。
富山ならどこで食べても質が良いのはわかってるので、一人だと注文する品数も限られるし、できるだけその店の個性を楽しみたいからである。
しかし・・・
こんな宝石箱のようなショーケースを見せられてはもうたまらない。
今どき刺し身を下駄に乗せてくる居酒屋もそうそうないだろう。
さすが70年も続く老舗中の老舗店だけのことはある。
刺し身に合わせるのは立山の熱燗二合。
立山の熱燗はクセもなく守備範囲が広いのでこれを頼んでおけば間違いない。
予想残ライフ:1645
単価の高いものはもう厳しいかなということで、次に500円の玉子焼きをオーダー。
目の前に置かれた瞬間に思い出したけど、ついさっき玉子とじ食べたばかりじゃねえかよ。玉子料理が見事にタブってしまった。
つい先々週くらいのこと。かかりつけのお医者さんから「玉子ばかり食べてるんじゃないの?」と言われたばかり。
何が「いや~最近玉子食べてないですけどね~」だ。今まさに玉子ばかり食べすぎてるじゃんよ。
しかしこの玉子焼き、実にたっぷたぷである。
汁気たっぷりすぎて箸で持ち上げるのがなかなかに困難だ。
口に頬張ればやさしい甘さが口内を包み込み、とろけるような食感と旨味の洪水がどっと押し寄せてくる。
なんともやさしく懐かしい味だ。
予想残ライフ:1095
自家製ダネというおでんも実に気になるところだが、そうなると酒も足らなくなり崖っぷちに立たされてしまうことは必定。
となれば、最後は富山名物のあれでいくしかない。
そう、富山の郷土料理あんばやしだ。
あんばやしとは薄いこんにゃくを串に刺し甘辛い田楽みそをかけたもので、味噌は一般の田楽みそに比べて気持ちシャバっとしているのが特徴。
富山の縁日ではおなじみの食べ物なので、富山で生まれ育った人であればきっとルーレットの結果に一喜一憂していたに違いない。
ルーレットには数が書いてあり、出た数の本数だけあんばやしがもらえるというシステムだ。
縁日のあんばやしよりも太くカットされたこんにゃくはより多くの舌の面積に触れることとなり、田楽みその甘辛い鮮やかな味が酒飲みのハートを鷲掴みにする。
これならお腹が膨れてても食べられるし熱燗にもよく合うし、値段も300円なので気軽にオーダーできるのも良い。これはリピ必至の一品だ。
予想残ライフ:765
店内ではオヤジたちが集う店らしい会話が繰り広げられている。
隣の席では初めて会ったお客さん同士が話をしているようだ。
「何の仕事してるか当ててみ?」
わかるわけねーだろ・・・と一人心の中でツッコミを入れていた小生。
反対側の隣の席では「ったく、何考えてんだよ。んなんありえねーだろ~。」と酔っぱらいオヤジが店主に向かってくだを巻いている。
店主は仕事しながら黙って聞いている。
かと思いきや、店主がどこかに行った後も「ほんまダラやな。ったく、いい加減にせえや~」とオーバーアクションも交えてよりヒートアップしていた。
単なる独り言だったようだ。
ここで計算してみると、いよいよ残ライフは1,000円を切ってきたと思われる。
さすがに保険はかけとかなきゃいけないので、まあ今回はこの辺で勘弁しといてやんよとばかりにお勘定タイム。
ドキドキ・・・・・
気になる会計・・・ というかあまりに気にしすぎの無粋な会計は・・・4,550円であった。
ちょっとまだ余裕があったな。意外とかつ玉がとじが安かったようだ。
ならば、もうおでん1~2品とお酒一合くらいならいけたのではないか。
いやいやいや!!
これがもし足りなかったなら皿洗い職人が爆誕していたことだろう。酒飲みは引き際も大事。
初訪問の丸一は実に奥が深い店だった。とても一度や二度訪れたくらいではその真価は掴みきれないだろう。
この店には酸いも甘いも噛み分けた大人たちが、それぞれの思いで集っている。普段の生活の中で重ね合わされた仮面を唯一脱ぎ捨てられる空間なのかもしれない。
新入りの小生が仮面を外せるまではまだしばらく掛かりそうだ。
コメント
コメント一覧 (2件)
はじめまして、あるのんさんが丸一さんが初めてとはびっくりしました。そうがわでは知らない人はいない店ですからね。私も失業中、昼まからしょっちゅう通ってました。最近はコロナで空いていますが、以前は一杯で入れなかった位です。女将さんが愛想悪いですがいい人です。肴も旨いし、いい店です。
アルコール依存症疑いの労働者さん、こんにちは。
お店の存在や噂はかなり前から知ってはいたのですけどね。
確かに訪問時に1~2席ほど空いてましたが、あれでも空いてたほうなんですね。
でも混むのもわかるほどに良いお店でした。
女将さんの噂もあちこちから聞いていましたので、心の準備はバッチシでした(笑)