こんにちは、富山人あるのん@_arnon_です。
富山市八尾町の玉旭酒造は「おわら娘」などで知られる酒蔵でしたが、近年では斬新なお酒を次々と登場させて大きな話題になっています。
玉旭DESPERADO純米無濾過生原酒、玉旭WHITE純米うすにごり生酒、玉旭BLACK純米吟醸生酒、玉旭BLUE大吟醸生酒など、横文字を用いているもの特徴的ですが、ラベルのデザインからも洗練された現代的なセンスを感じます。
目次
酒母絞りのお酒、ECHOESとMOTHER
玉旭酒造では先ほど述べたお酒だけでなく、最近より一層大きな脚光を浴びているお酒があります。
それが玉旭ECHOESと玉旭MOTHERという酒母絞りのお酒です。
3段仕込みという言葉を聞いたことはありませんか?
お酒を造るには、タンクに水・蒸し米・麹・酒母を3回に分けて投入して発酵させます。
酒母とは発酵を促すためのお酒のもととなる小さなお酒のことで、小さなタンクに水・蒸し米・麹・酵母・乳酸を投入して培養したものです。
酒母絞りとは本来行うはずの三段仕込みをせず、酒母の段階のものを絞って商品化したものです。
ECHOESとMOTHERの比較
ECHOES | MOTHER | |
アルコール度数 | 12% | 12% |
日本酒度 | -55% | -52% |
酸度 | 8.0 | 8.0 |
精米歩合 | 60% | 70% |
使用米 | 国産米 | 八尾町桐谷地区産 雄山錦 |
使用酵母 | チューリップ花酵母 | 非公開 |
価格(720ml) | 1,600円(税別) | 1,600円(税別) |
販売時期 | 通年 | 秋頃 |
白ワインと見紛うような味わい
まるで白ワインのような強い酸味と上品な甘味は、黙ってこれを飲んで果たして日本酒と気づく人はいったいどれほどいるのか、というほどに白ワインテイストな味わいです。
ゆえに、ワイングラスで飲むほうがよりしっくりくる日本酒であると思います。
ECHOESをよく味わってみると、酸味と甘味の奥に日本酒らしい苦味をほのかに感じますが、それは日本酒だと思って飲んでいるからで、ブラインドで飲まされたら気づかない自信があります。
味の甘辛度を示す日本酒度は一般的に+3~+5くらいが多いのですが、このお酒は-52~-55ということなので、これはかなりの甘口のお酒ということ。(でも数字ほどの甘ったるさは感じません)
アルコール度数は(加水調整して)15%~16%で出荷するのが一般的ですが、このお酒は12%です。
日本酒は麹の働きによってお米のデンプンを糖に変え、酵母の働きによって糖をアルコールに変えていくのですが、酒母を絞るということは糖分が多く残った状態となり、必然的にアルコール度数も低いものになります。
通常はこの酒母を用いて三段仕込みで強く発酵させて、残った糖分をさらにアルコールに変えていくことで、辛口でアルコール度数の高い日本酒が出来上がるのです。
ちなみに糖をアルコールに変える有能な酵母ちゃんですが、アルコール度数が高くなっていくと自ら生み出したアルコールによってその多くが死んでしまうとのこと。切ないっすね……
ECHOESもMOTHERも酸度は8.0となっていますが、一般的なお酒は1以上2未満なのでかなり高いといえるでしょう。
ECHOESを食べ物と合わせたらどうなる?
身近に手に入るもので色々試してみました。(他にも色々試しましたが、あえて載せるほどではないと思うものは省略しました)
さて、ここで皆さんも想像してみて下さい。これら①~⑤の中でどれが一番酒母絞りに合うと思いますか!?
ぼくの感覚では、3番のもずくが一番マリアージュとして優れていると感じました。
ハーブ料理にはハーブの香りのするワイン、スパイシーな料理にはスパイスの香りを感じるワインが合うと言われるように、酸味の強い三杯酢のもずくが酸味の強い日本酒に合うと感じたのは自然なことだったのかもしれません。
⑤番のトロピカルミックスは意外と甘みが強かったので、もうちょっと甘みが低くて酸っぱいフルーツならもっと合いそうだなと思いました。
④番のプロセスチーズは普通に合うと言えそうですが、もっと酸味のあるしっかりしたチーズならさらに合うと思われます。
ECHOESとMOTHERの比較
本当は両方並べて味比べをしてみたかったのですが、「MOTHERは秋だけの限定商品なので多分もうどこにもないよ」と酒屋さんに言われてしまいました。クスン…
リカーポケットみずはた、布一酒店、エスポアなかやす、春田酒店
両方を飲んでみて、全体的な味の印象はかなり近いものとなっています。
ECHOESのほうが精米歩合が高いからなのかお米が違うからなのか、若干スッキリした印象があるように思いました。
ECHOESとMOTHERの違いですが、上記の表の数字による比較ではもさほど大きな差は見られないように思いますが、使用されるお米が「八尾町桐谷地区産 無農薬栽培米 雄山錦」であるという点はかなり大きな違いといえるのではないでしょうか。
このお米は田植えから稲刈りまで蔵人らや関係者らによって育てられた酒米ということでして、玉旭MOTHERは秋の収穫を祝うべく登場したお酒なのでしょう。
おわら風の盆で五穀豊穣を願い、地元の人や関係者らによって作られたお米からMOTHERが醸されるというのは、とても八尾町的で素敵な試みではありませんか。
ECHOESの燗も密かにオススメ!
かなり前の話ですが、とある生酒の原酒を興味本位で燗にしてみたところ「やらなきゃよかった…」と後悔したことがあり、あれからずっと封印していた生原酒の燗を解き放ってみました。
ふんわりと立ち込める湯気が心安らぎます。恐る恐る口に含んでみると・・・
あ、なんかすごくいい・・・
暖かくなると酸味や甘味が丸くなってさらに口当たりが良くなるのです。
冷酒でももちろんいい食前酒なのですが、これを温めると冷え切った身体に優しいお酒として重宝しそうです。
ガラガラガラ・・・
マスター「いらっしゃい!◯◯さん久しぶりやね。外寒かったやろ」
客「耳冷たてならんわ。こりゃ明日道路ツルツルやねぇ。じゃあ、とりあえず熱燗もらおうかな」
スッ・・・
客「え…これは!?甘酸っぱくて爽やかな味。何このお酒!?」
心なしか、マスターの口元が上がる。
マスター「話題の酒母絞りを燗にしてみたんだけどね。空きっ腹に熱燗は酔いがまわりやすいし、爽やかな酸味と甘味は食前酒にもぴったりだしね」
真冬の一杯目に酒母絞りの熱燗、すごくいいと思いますよ。マスター有能!(笑)
(熱燗にするときはあまり熱々にしすぎないほうがいいと思います)
やらかし企画!?さらなる酒母絞り酒、富富富とGRANDMA
蔵元自ら「やらかし企画」と呼ぶ酒母絞りのお酒が昨年末に2種類販売されました。
酒母絞り「富富富」
昨年正式に販売が開始された富山の新しいお米「富富富(フフフ)」。
酒造りには合わないとされる食用米を、食用米同様90%の精米歩合で醸した酒母絞りのお酒で、富山では高い話題性がありすぐに完売しました。
味わいやはり甘酸っぱい路線ですが、ECHOESやMOTHER以上に鋭い酸味を感じるお酒でした。
酒母絞り「GRANDMA」
GRANDMA(グランマ)はMOTHERの濁り酒で、MOTHERよりもさらにお酒の原型となることからGRANDMAという名がつけられたのでしょう。
味はMOTHERの印象そのもので、濁り酒と聞くと甘味が強いのではないかという懸念がありましたが、このお酒はMOTHER本来の味から逸脱しない爽やかさが残っていて、来年も出るならまたぜひ飲んでみたいと思うお酒です。
ただ、販売した日の昼には完売したということなので、入手はかなり難しいと思われますね。
このGRANDMAは賞味期限が一週間というのも特徴的で、別に一週間たったからといって腐るとか飲めなくなるとかいうことではなく、多分発酵が進みすぎて味がどう変化するか保証できないということなのでしょう。
まとめ
全国的にも話題を集めている玉旭酒造の酒母絞り4種を試してみました。
MOTHER・GRANDMA・富富富はほんの一時期だけの限定商品で、ECHOESも昨年は限定販売でしたが今年からECHOESは通年販売されるようになっていつでも購入することが出来るようになりました。
日本酒は苦手という人にも、日本酒通の人にも幅広くオススメできる楽しいお酒ですので、飲み会や贈り物などに持っていけば盛り上がること間違いなしですよ。
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