宇奈月温泉といえば富山県最大の温泉街である。
通常温泉街での宿泊といえば旅館やホテルに泊まり、夜は宿泊施設ご自慢の料理をいただくのがセオリーだろう。
もちろんそれは素晴らしいエクスペリエンスに違いないが、ぼくは宇奈月温泉街に魅力的な飲み屋がいくつかあることに以前から注目していた。
ならば、宿泊は素泊まりプランにして宇奈月の夜を飲み歩いてみようじゃないかと、念願だった宇奈月温泉街での一人飲み計画を厳かに実行することにした。
宿に車を駐めさせてもらった後は、せっかく秋の宇奈月に来たのだからと、まずは散策にて眼福を満喫。
この時期の宇奈月は紅葉が大変に美しく、トロッコ電車の駅には多くの人で賑わっていた。
トロッコ電車がこんな間近で見られるとは、よもやよもやだ。
いやあ、相変わらず出来が良いなあ、この模型は。
ひとしきり紅葉を楽しんだところで、駅前に戻って茶でもしばき倒すとしよう。
駅周辺を散策していると、普通に足湯があるのも温泉街ならではの趣。
実際に入ってみると、お湯がぬるめなのが実に気持ちがよく、ついつい根っこが生えてしまう。
温泉街なということで建物も趣があり、ぶらりと歩いているだけでも楽しい。
酒おみやげの店 いわさき
さて喫茶店である。ちょっと調べてみたところ喫茶店はいくつかあるのだけど、喫茶店についてはあまり深く考えてなかったのでどこに入るべきかうろうろ徘徊していると、
んん!?
あるお店の前で、ピタリと足が止まった。
宇奈月温泉駅の目の前にある「酒おみやげの店 いわさき」。店名からしてお土産店なのかと思いきや、よく見てみると喫茶店でもあるようだ。
外に面した飲食スペースもあったりして、なんだかとても只ならない雰囲気を醸し出している。ビビビときてしまったのでこのお店に決めた。
「パパは地ビール ママはコーヒー」
現代の企業がこんなキャッチコピーを打ち出そうものなら炎上待ったなしだが、恐らくは昭和に作られたものと思われるのでセーフ。
お店はどことなくエキゾチックな雰囲気を漂わせているが、店内はもっとすごい世界が広がっていた。
ゴーゴー喫茶と見紛う音量の歌謡曲に、小物で埋め尽くされた異国情緒あふれる店内。個性的という言葉ではとても形容しきれない世界観だ。
宇奈月ビール・ボック「カモシカ」600円
程よい甘みと味わい深いコクがたまらないなあ、この麦コーラ。もとい宇奈月ビール。
現在このお店にはこの黒ビールしかないということなので、「人気あるんですね」と言ってみたところ
ぶっちゃけすぎる・・・
このママさんはとても親切な方で、散策MAPをいただいたり、これから行こうと思っている施設の情報を伺ってみると、このブログに載せるのを躊躇うほどの忖度ゼロなお話を伺うことが出来た。
宇奈月温泉駅や道行く観光客を眺めながらのビールはなかなかオツだ。
最初は本気でお茶だけを飲むつもりが図らずも0次会となってしまった。まあ今日はずっと一人なので0次会もへったくれもないけど。
地元民による偽りなき宇奈月温泉情報を知りたい人は、ぜひこちらのお店に立ち寄っていただきたい。
酒と肴とラーメン おかめん
時間は午後5時。辺りはもうすっかり暗く、いよいよ大人のおやつの時間だ。
一軒目はどのお店にするか決めていたので、17時を回った瞬間にBダッシュで駆け込んだ。
そのお店は宇奈月温泉駅のすぐ目の前にある「酒と肴とラーメン おかめん」。
これらのメニューだけを見ると「ラーメンにこだわった若向けの居酒屋かな?」という感じだが、このお店の真価は実は日本酒にあるといっても過言ではない。
画像右上の日本酒飲み比べレギュラー(90分)1980円に刮目していただきたい。
これは全国から選りすぐりの地酒20種類が飲み放題になるという、日本酒好きにはたまらないサービスが堪能できるのである。
地酒はその時々によって異なり、この日のラインナップは以下の20種。
もう1,000円高い2,980円の飲み比べプレミアムになると以下の地酒3種も飲み放題となる。
獺祭、勝駒、而今。日本酒好きにはおなじみの人気のお酒ばかり。
確かに日本酒はすごいけど、じゃあこれらの日本酒に合うおつまみは!?というと、もちろんそこも抜かりはない。
その日のおすすめの黒板には、しっかり日本酒に合う酒肴も用意されているのでどうかご安心いただきたい。
やげんモモ串 500円
しっかり焼きの焼き鳥。やげん軟骨の歯ごたえがたまらなく好きだ。
筋子醤油漬 450円
これは酒の肴としても最高だし、ご飯の上に乗せようものならどんなどんぶり飯でもご飯が足りなくなるだろう。
添えられた大根おろしがまたいいバランサーとして機能している。
日本酒は自分で冷蔵庫から取り出して注ぐセルフスタイル。
冷蔵庫の奥には違う日本酒があるのでいちいち取り出すのは楽ではないけど、それで全国の旨い酒が飲めるのだから飲兵衛にはお安い御用ってわけさ。
この6種以外にもう2~3種飲んでいるけど、注ぐ量を少なめにすることでより多くのお酒が味見できるという、セルフ式だからこそできる省エネ飲みがこのパラダイス銀河を可能なものとした。
ふぐ白子ホイル焼き 1,200円
真鱈の白子は富山の冬の味覚の一つとして人気があるが、ふぐの白子はなかなかに見る機会は少ない。
うすくピンクがかった白子はまるで宝石のようではないか。
何年ぶりに食べたか思い出せないふぐ白子であったが、日本酒との絶妙なるマリアージュを心から堪能することができた。
そもそもこのお店を一番目に持ってきた理由は、数年前にこのお店で行われた日本酒の会に参加したことがきっかけとなっている。
とてもリーズナブルな会費ながら、うまい日本酒や気合のこもった素晴らしい料理の数々に、「今度また絶対に来よう」と心に誓っていたのである。
今夜はその念願が叶ってとても嬉しい。
どうか和らぎ水も忘れずに。
最初満タンだったピッチャーが最後は空に。おかげでそこまで酔うこともなく、気持ちよく次へバトンを引き継ぐことが出来るというもの。
酒と肴とラーメン おかめん
住所:黒部市宇奈月温泉330-22 太田ビル102号
営業時間:11:30~14:00 17:00~21:00
定休日:火曜日
味処 河鹿(かじか)
おかめんの斜向いにあるお店「味処 河鹿」。
なんとも飲兵衛心をくすぐる外観をしてやがるぜ。
「おでんが名物とは聞いてたけど、これはうまそうだ」と胸をときめかせながらカウンターに腰掛けると、隣から不意に声をかけられた。
「あれえ~!?さっきの・・・?」
先ほどの喫茶店のママさんが隣りでご飯を食べていた。
このお店では居酒屋メニューの中になぜか中華料理メニューが普通に存在するのだが、ママさんはご飯の上に麻婆豆腐をかけてカレーライスのように食べていた。
おでん5種盛り800円
確かにおでんは出汁がおいしくて味もよく馴染んでいる。
「この味は落ち着くなあ。5種と言わずにもう全種でも頼みてえわ」と思ってメニューを見てみた結果、
な・・・ 25種類だとぉ・・・!!?
・・・・・ま、まあ今日のところは勘弁してやんよ。
事前にネットでメニュー情報を調べていたときに、ぜひとも食べてみたい一品があったんだよな。
それは・・・
この黒部コロッケとは黒部特産の丸イモに黒部名水ポークを加えたもので、黒部の郷土料理っぽいからぜひ食べてみたかったんだけどなあ。
他所で仕入れた情報によると、このコロッケに使う丸イモはわざわざ熟成させるのでそういつも置いてあるわけではないらしい。
そんなん聞いたら余計食べたくなるじゃんよ!!!
宇奈月名店の極上とろ湯葉 550円
「宇奈月名店の極上とろ湯葉」なんて見てしまったら、そら食べないわけにはいかないよね。
かなりボリューム感ある。
湯葉のイメージって一枚一枚うやうやしくいただく感じだけど、この湯葉は豪快な塊をいただくので実に味わい豊か。
確かに極上の名に偽りなし。これは大当たりだった。
次にわざわざボードメニューに書いてあるおでんダネが気になってオーダーしてみた。
おでん バイ肝 350円
おでんでこんな立派なバイ肝が出てきたのは初めてだ。
黒いキモの部分はビールでは力不足。となれば・・・!
曙の熱燗はこの苦味のきいたバイ肝をもしっかり受け止めてくれる。
さて、お次は・・・
うーん・・・? 左上の煮物はいったいなんだろう?聞いたことないなあ。
地元民のママさんなら知ってるのではないかと思って訪ねてみた。
う~ん、確かに!?(///ω///)カアァァ
このあるのん、5年ほどブログを書き続けていたことで視力が少しずつ落ちていたことは認めよう。
しかしここ近年、なぜか近くのものまで見づらくなってきていることは容易に認めたくない。
しのだ煮 200円
篠田煮とは油揚げを使った料理で、具材を挟んで和風の味付けで煮たものだよ。わかったかね?
このしのだ煮はそこそこ甘いのだけど、まったく嫌な甘さではなく酒飲みにもおいしく食べられて、静かに心を打つ味だ。
ここでスタッフのお姉さんに気になってたことを聞いてみた。
宇奈月温泉街のポプラはこの辺りで唯一のコンビニなので、いつまでやってるのか確認しておかねば。
新型コロナの影響がここにもあったということなのか。
このお店はそもそも釜飯が有名。
でも今釜飯を食べたら試合終了してしまうので、黒部コロッケとともに次回の宿題ということにしよう。
ここでママさんが惜しまれつつ退店。このママさんはやってきたお客さんに笑顔で「いらっしゃ~い」とスタッフさん顔負けの接客技を披露するなど、とても気さくで魅力的な方だった。またビール飲みに行くからね。
確かに歩いたら10秒くらいで着く距離ではある。
しかし「危険とは、普段の何気ない行動の中にこそ潜んでいるものである」。by.アールノン・アルノン
それはともかくとして、この河鹿というお店は個人的にツボだった。機会があればまたぜひ訪れてみたい。
あと、お冷のピッチャーを一人で半分飲んだことをここに報告しておこう。
飲食店経営の皆様、このあるのんが飲みに来たら水代を請求してくれてもいいのよ。
お食事 ささや
ではいよいよ〆のラーメンと洒落込むとしよう。
最初のお店おかめんにも、二軒目の河鹿にもラーメンはある。なのでそのままラーメンを食べれば無駄に歩くこともなくシームレスにラーメンがいただけるわけだが、酒飲みはそれじゃダメなんだよ。
ラーメンを食べるために店を巡るという行為が尊いのだ。
・・・という酔っ払いの戯言をつぶやきつつ訪れたのがこちら「お食事 ささや」というお店。
店内もメニュー構成も、いかにも町の食堂といった雰囲気だ。
じゃあさっそくラーメンを・・・ と思ったその刹那!
何いぃぃ!!?刺し身じゃとおぉぉ!!
こらもう飲むしかねえじゃん!!!ここでまた酒飲みのスイッチが入った。
チューハイを頼んだら付き出しが出てきた。これはまるで居酒屋ではないか。
さてと、では刺し身は何にしようかな。そういえば居酒屋を二軒ハシゴしてるというのに、刺し身はまだ未食ではないか。
ヒラマサ
なんという厚切りか。画像で見る以上に実際の刺し身は分厚い。
今までで食べたヒラマサの刺身は例外なく薄く切ってあったのに、これはその1.5倍ほどは厚く切られている。
謎の勢力「刺し身は肉質に合わせた厚みにしないと・・・」
ほうほう、それはまあ確かに・・・
それがどうした!!
不意に出会った豪快な宇奈月の刺し身にテンション爆上がり。
では気分もお腹も最高潮に達したところで今度こそ〆といくか。
ラーメン 650円
先代から受け継がれた味というこのラーメンは、このお店の人気ナンバーワンメニュー。
うん、いいね。
見た目はまさに食堂系ラーメン。飲んだ後にはこういうのが五臓六腑にしみるんだよ。
見た目に薄味かと思いきや、しっかり出汁がきいてて酔っぱらいにも嬉しい塩加減。見た目以上に力強さがある。
麺も主張しすぎず程よい食感がスープとよく絡む。
うん、これはいいラーメンだ。やはり尊い行いをしたからこそいい〆にありつけたというものだろう。
お食事ささやはご夫婦で経営されているお店であるが、こちらのお店でも宇奈月のお話を色々と伺うことができた。
宇奈月温泉街の一見客への温かさに感謝しかない。
お食事 ささや
住所:富山県黒部市宇奈月温泉243-4
電話:0765-62-1620
営業時間:10:30~23:00
定休日:木曜日
エピローグ
この日はとても充実した夜を過ごすことができて、「宇奈月温泉街で飲むのががこんなに楽しいのなら、これはまたぜひ訪れなければなるまいて」と、新たな念願を心に誓ったのであった。
今回訪れた4店はすべてプレミアム食事券が使えるということもぜひ覚えておいていただきたい。
さあ後は戻って寝るだけ。
ROUND5 FIGHT!!!
宇奈月の夜はまだまだ終わらない。
to be continued.
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