─ 権利ノ濫用ハ之ヲ許サス ─
こんにちは、富山人あるのんです。
富山の宇奈月温泉が「民法の聖地」と呼ばれていることはご存知でしょうか。
温泉が湧くほのぼのとした観光地と民法という法律の結びつきがなんとも不可解な気がしますが、それは昭和初期に法定で争われた「宇奈月温泉事件」が関係しているのです。
この宇奈月温泉事件は多少なりとも法律を学んだ人なら知らぬ者はいないという有名な事件で、我々一般人でも民法の教科書の1ページ目に民法1条3項として載っている判例と聞けば、この事件がどれほど重要なものだったのかが想像つくというものではないでしょうか。
宇奈月温泉事件のいったい何が有名たらしめているのかというと、それは日本の裁判史上において初めて「権利の濫用の禁止」という判例が大審院(現在の最高裁)で登場し、その後の裁判史においても大きな影響を与えた極めて重要な判例だったからです。
富山県民は宇奈月温泉事件を知らない説
法曹関係者で知らぬ者はいないというこの事件ですが、一般の富山県民でこの事件を知ってる人は実は少ないのではと思うことが多々あったので、認知度がどんな感じなのか気になってX(旧Twitter)でアンケートを取ってみました。
富山県在住、または富山県出身の人に質問です。昭和初期に争われた裁判「宇奈月温泉事件」を知っていますか?
— あるのん富山のグルメとブログ (@_arnon_) November 1, 2023
「回答だけ見る」の10%を除外すると約7割の人はほぼ知らないということになりますね。
では宇奈月温泉事件とはいったいどんな事件だったのか、事件の舞台となった宇奈月町の「宇奈月温泉木管事件碑」へ訪れてみたいと思います。
宇奈月温泉木管事件碑
※この事件をよく知ってる人という人は読み飛ばし推奨
宇奈月温泉木管事件碑って温泉街の中かちょっとだけ外れたところにあるのかと思いきや、温泉街からさらに奥へと進んでトンネルを5つくらい超えた山の奥地にありました。
温泉街からは約10分の距離です。
本当に自然以外何もないところで景色は抜群にいいのですが、道路向こうの後ろ側から「ガサッ」という生き物っぽい気配があり「いま熊でてきたら終わるぞ・・・」とビビリながら記念碑へと歩みよっていきます。
宇奈月温泉事件とは
あるのんによる人力AIで要約すると──
宇奈月温泉のお湯は「引湯管」という木管を繋ぎ合わせたものを使用して7.5km先から送っていました。木管を埋設した土地はほぼ黒部鉄道(現在の富山地方鉄道)が所有していましたが、わずかに2坪ほど民地にかかっていて許諾を得ていませんでした。
それに目をつけたXなる人物がその土地を含む周辺の土地を所有者から買い取り、黒部鉄道に「木管を撤去せよ。それが出来なければ土地をすべて買い取れ」と迫ります。
その請求金額は30円ほどの土地に対し2万余りという超高額な金額であったため、とうぜん黒部鉄道はそれに応じることはありませんでした。するとXなる人物は引湯管の撤去と立ち入り禁止を求めて裁判を起こしたのです。
しかし一審・二審ともに請求を退けられ、そして大審院にて「権利の濫用の禁止」という言葉でもって請求を棄却。
─ ポイント ─
- 引湯管は宇奈月温泉にとって重要なインフラであること
- 引湯管は巨額を投じて整備されたものであり、撤去や迂回は事実上不可能であること
- その土地は急傾斜地であり利用価値はなく、かかっている土地もわずかなものであること
- わずかにかかった土地に目をつけ買い取り、それを法外な金額で売りつけようとしたこと
- Xの主張は所有権の行使ではあるものの、所有権の範囲を超えており「権利の濫用」に他ならない
この「権利の濫用の禁止」という判例はその後の裁判においても同旨判決が続き、1947年(昭和22年)の民法改正により「権利ノ濫用ハ之ヲ許サス」という明文が設けられたのです。
かつて使用されていた木製の引湯管は、宇奈月温泉の街ナカで展示されています。現在は木製ではなく、より使い勝手のいい合成樹脂管が使用されています。
宇奈月の温泉むすめが苦手なものとは!?
──とまあ文字多めの概略でしたが、宇奈月温泉事件がどういう事件だったのか、なんとなくおわかりいただけたでしょうか。
ええ、ここまでがこの記事の前提ですからね。本当にお伝えしたいことは今から始まります。
宇奈月温泉駅のすぐ近くにガチャガチャ・富山の地酒・グルメが楽しめるスポットがあります。
こちらの看板娘は「宇奈月 明嶺」ちゃん(うなづきあかね)という「温泉むすめ」のキャラクターでして、台湾や日本の温泉地を擬人化した地域活性クロスメディアプロジェクトです。
明嶺ちゃんはもちろん宇奈月温泉のキャラクターですが、各温泉地のキャラクターにはそれぞれ趣味・特技・好きなもの・苦手なものなどが設定されています。
他県の山代ちゃんやら山中ちゃんやら芦原ちゃんやらの苦手なものが、それぞれ「俗世」だったり「注目されること」だったり「火、火を使う料理」だったりと微笑ましいものが多い中、我らが明嶺ちゃんの苦手なものが「権利の濫用」という激シブなものだったりして、「担当者やるやん」と思わずにいられません。
激レアアイテム「権利ノ濫用除お守り」をゲットせよ
メディアでも紹介されていたのでご存知の人も少なくないと思いますが、宇奈月温泉では開湯100周年を記念して「権利ノ濫用除お守り」の授与を開始するという情報を入手しました。
そ、それは・・・・ ほすぃぃぃ!!!!
ぜひゲットしたいということで、どこで授与されているのがよく調べもせずに宇奈月温泉街を徘徊しました。あらゆるお土産店、民芸品店を覗いてみたけど売っている様子はまったくありません。
ついにネットで詳しく検索してみたところ、なんと「宇奈月神社で各月の1日のみ授与可能」ということでした。つまり、毎月1日10時~12時に宇奈月温泉街の宇奈月神社でのみ授与という割と入手難度の高いアイテムだったのです。
それは厳しい・・・ けど欲しい・・・
ええい、ままよ!!
──後先考えず、無理やり平日に宇奈月神社にやってきたあるのん氏。「授与所」の看板を見て心底ホッとする。
時間はこのとき9時50分くらい。既に何名か並んでいますね。(画像には写ってません)
さあもうすぐ授与がはじまる・・・!!と興奮を抑えきれないぼくでしたが、授与開始時間前に口頭でのアンケートが行われました。
「富山県内から来たのか県外から来たのか」とか「一泊したかどうか」とか「法曹関係者はいるか」などを聞かれて挙手で答えていきます。
「法曹関係者」で手を上げた人はスーツをバッチリ着こなし、使い古して丈夫そうなアタッシュケースを持っていて、神社の人からも「いかにもという感じですねえ~」という微笑ましいやりとりもありました。
10時になり「権利ノ濫用除お守り」の授与が開始されました。
列は10名いないくらいで「意外と多くないな・・・」という印象。知名度がさらに上がればもっと増えるんでしょうけどね。
初穂料(販売価格)は1300円~で、今のところ一人あたりの個数の制限はないとのことですが、ここで誰もが頭によぎるであろう「お守りの転売」という罰当たりな権利の濫用はオススメできません。
なぜなら、このお守りは県外から「どうか通販してほしい」という意見が多いとのことですが、頑なに通販はせず日時場所限定にこだわっているのはある理由があるからです。
それはもちろん、「宇奈月温泉に足を運んでほしいから」ということに他なりませんよね。
よりたくさんの人に宇奈月温泉にきてもらって、遊んで泊まって楽しんでいってほしい。そういう思いがあるからこそこの入手難度の高さなのです。
とはいえ、県外からだと授与の時間が早いので宿泊前提という敷居の高さはありますが、そこはもう割り切って受け入れて「宇奈月温泉へ泊まりに来てくださいね~!」ってことで。
あと、このお守りを転売なんかすると「全法曹関係者を敵に回す」ということにもなりかねません。それはもう考えただけでも恐ろしいことです。
権利ノ濫用除お守り
こ、これが夢にまで見・・・てはいないけど、憧れの権利ノ濫用除お守り・・・ゴクリ
なんて素敵なデザイン・・・ウットリ
キターーーーー(゚∀゚)ーーーーー!!!!
これはもう大事に使わせていただきますよ!とはいえ飾っててもしょうがないので積極的に使っていきますが、どこにつけようか悩むな~
パワハラでお困りの方
セクハラでお困りの方
ブラックな環境でお困りの方
その他理不尽なことでお困りの方
このお守りをその環境で人から見えるようにしておけば、もしかしたら何らかの効果が期待できるかも・・・!?
そして、あなたの精神が追い詰められているときに、このお守りがあなたの心の拠り所となってくれるかも・・・!?
さあ、宇奈月温泉へGO~!!
ヒロシ・・・権利ノ濫用ハ之ヲ許スマシ!
宇奈月神社
住所:〒938-0282 富山県黒部市宇奈月温泉(セレネに向かって左横)
授与日時:毎月1日の10:00~12:00
初穂料:1300円~
商品名:権利ノ濫用除 お守り
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